摂食障害って何?【タイプ・影響について】
摂食障害と聞いて、どんなイメージをもちますか?どんな人を思い浮かべますか?
ダンサーの8人に1人、そしてバレエダンサーの6人に1人が摂食障害を患っています。
プロのダンサーの2人に1人は引退するまでに摂食障害を患います。
それなのに、ダンス指導者や治療家(整体師とか、フィジオとか)は、摂食障害に関するトレーニングをほとんど受けていません。正確には、受けられる機会がほとんどありません。
これって、すごく危なくないですか?
ダンスの世界ではタブーとされている摂食障害の話ですが、ダンサー・指導者・治療家そして家族であるなら必ず知っておかなければいけない情報です。
だって、ダンサーやアスリートは誰よりも摂食障害になりやすい環境にいるから。
正しい知識を身につければ、予防したり、早期治療を受けることが可能になります。
予防出来ればダンス生命やアスリート生命を守ってあげることが出来る。
早期治療にアクセスすれば、今後の人生を守ってあげることが出来る。
摂食障害の診断基準のDSM-5を知ろう
摂食障害の診断は、DSM-5(精神疾患診断マニュアル(第5版))に基づいて行われます。
数百ページある分厚いマニュアルから、ダンサー・指導者・治療家・家族がしっておくべき3つの摂食障害の内容をまとめました。
拒食症 (Anorexia Nervosa)
身体が必要とするエネルギーよりもはるかに少ない摂取量が続くことで、身体的および精神的な問題を引き起こす
体重を増やすことに対して大きな不安・恐怖がある
深刻な低体重(であってもそれを認めない、もしくは栄養失調で脳が萎縮してしいるため認識出来ない)
重症度は軽度、中等度、重度、最重度に分けられます。
拒食症は、制限型と過食・嘔吐型の二つに分かれます。
女性の場合、エネルギー(食事)の摂取量が減り続けると月経が止まります。
男性の場合、目安となる月経はありませんが、血液検査をすればテストステロン(男性ホルモン)が減っていることがわかります。
摂食障害と聞いてまず思い浮かべるのは、拒食症じゃないですか?
実は今日紹介する3種類の内で、拒食症は有病率が一番低いんです。摂食障害全ての3%程度。
一般的に知られている拒食症は明らかな低体重であることが多いけれど、例え普通体重、もしくはそれ以上であっても、著しい減量は拒食症を引き起こします。
BMIの低体重カテゴリーに当てはまらない拒食症を、異・拒食症といって、見た目だけでは判断できない病気なのです。
過食症 (Bulimia Nervosa)
過食を繰り返している(特定の時間内(2時間以内)に、一般的な量よりもはるかに多い量の食べ物を食べること。過食中はコントロールが効かない)
食べすぎた罪悪感や太りたくないという思いから、嘔吐などの代償行為を繰り返す
過食と代償行為が最低週に1度の頻度で、3か月以上続いている
重症度は過食や代償行為の頻度に比例する
過食性障害 (Binge Eating Disorder)
過食を繰り返している(特定の時間内(2時間以内)に、一般的な量よりもはるかに多い量の食べ物を食べること。過食中はコントロールが効かない)
代償行為は行わない
過食行為が以下の項目の3つ以上に当てはまる
普段以上に食べるスピードが速い
気持ち悪くなるまで食べ続ける
お腹が空いていないのに大量に食べる
食べているところを見られたくないために1人で食べる、または隠れて食べる
食べた後に罪悪感や不安、もしくは鬱の様な症状がある
過食行動が最低週に1度、3か月以上続いている
過食症と過食性障害でよく聞かれるのが、「過食とドカ食いはどう違うの?」という質問。
一番の違いはコントロールが効かない感覚があるかどうか。
止めたくても止められないのが摂食障害なんです。
OSFED(特定不能の食行動障害または摂食障害)
上記の診断基準全てに当てはまらないけれど、いくつかの症状は満たしている状態の場合、OSFEDと診断されます。
例えば過食を繰り返しているけれど頻度が2週間に一度とかの場合、厳密には過食性障害に当てはまらないけれど、OSFEDには当てはまります。
頻度が少ないから辛くないなんてことありません。
OSFEDは摂食障害の中で一番多いタイプです。
ここに記している以外の摂食障害タイプもあります。例えばARFID(回避・制限性食物摂取症)、異食症、そして反芻症などです。ですが、今回はダンサーに多いものとして、AN、BN、BED、そしてOSFEDにフォーカスを当てます。
摂食障害によって引き起こされるさまざまな身体的影響
拒食症の短期・長期的な影響
骨粗鬆症
心不全
電解質異常(突然死につながります)
貧血
栄養失調
体力・筋肉量・思考力の著しい低下
脳の萎縮
肝機能障害
低血糖(突然死につながります)
うつ病
過食症の短期・長期的な影響
不整脈
心不全
嘔吐による胃酸で食道が炎症を起こしたり、歯が侵食される
電解質異常(突然死につながります)
膵炎(膵臓が炎症を起こすこと)
うつ病
過食性障害の短期・長期的な影響
心臓病
関節炎
消化異常
睡眠障害
高血圧や高コレステロール
2型糖尿病
うつ病
残念な話、日本の摂食障害治療はこちらオーストラリアや欧米と比べて大分遅れています。
色々なドクターと話してきたけれど、10年分くらい遅れてると言っても過言じゃない・・・と。
その理由の1つに、摂食障害だけでなく精神疾患全般に対する偏見が強いっていうのが大きいとおもう。
ココロの健康を保つためには、カウンセリングって必要なんですよ。 でもカウンセリングを受けるのって社会的に好意的な見方されないよね。
体の健康を保つために薬を飲んだり、マッサージを受けたりするのは一般的なのに。
摂食障害は長引けば長引くほど、症状&後遺症が悪化し、治療も長期化します。
心身共にぼろぼろになるのが摂食障害です。
臓器の機能、脳の機能、免疫力、パフォーマンス、学力、ボディイメージ、自分や周りを信じる力・・・全てが下がっていくのが摂食障害です。
発症して数年経ってから治療を始める人が多いんだけど、そうすると治療に4-5年かかるのも珍しくない。
逆に「あれ?おかしいな」と思った時にすぐに治療を始めれば、早く治る可能性がぐんっと高くなる。
そうすれば、自由な生活が早く手に入る。
だからまずは摂食障害が何かということを知ってください。
次回の記事では、摂食障害のリスク要因、そして摂食障害を早期発見するための症状についてお話しします。
オンライン講座のお知らせ
新・家族ができる神経性やせ症の食事支援/90分ダイジェスト版
2023年4月23日(日)13:00-14:30
2020年に大変好評だったオンライン講座、【家族ができる神経性やせ症の食事支援】の一番良い部分だけをそろえた90分ダイジェスト版を来月開催します。
「摂食障害を抱える人はどのように病気を体験しているのか」「病気や回復について、家族はどのように患者と話せばいいのか」「家族ができる食事場面の工夫にはどのようなものがあるか」という、ご家族が最も知りたい3つのポイントについてお話しします。さらに、摂食障害を経験し回復した患者本人や家族にご協力をいただき、体験談をお話しいただきます。
以下に当てはまる場合、是非ご参加ください
摂食障害のお子さんをもつ親御さん
摂食障害の生徒のリカバリーをサポートしたい指導者の方
患者さんをより理解したいと思う摂食障害治療者の方