ダンサーにとって最重要な栄養素は炭水化物

ダンサーの2-3人に1人がRED-S(相対的エネルギー不足)に陥っていることは以前書きました。

では、多くのダンサーで足りなくなる栄養素ナンバー1はなんだと思いますか?

炭水化物なんです。

しかも、10-12歳のダンサーでも炭水化物を制限しているというデータもある、これって大問題だと思いませんか?

だって炭水化物不足ということは、

  • 集中力が落ちる

  • 思考力が落ちる

  • 体力が落ちる

  • 子供・思春期の場合は成長にも影響が出る

いくらプロテインやらビタミン・ミネラルやらのサプリメントをとっていたとしても、基本的な代謝がなっていなかったらそれらも使い切れません。

そして炭水化物不足が続くと新陳代謝は落ちます。

また、怪我の多いダンサーほど炭水化物の摂取量が低いということも分かっています。

もうホント、炭水化物を制限することで良いことなし。

ということで、炭水化物についてもう少し詳しく知りましょう。


炭水化物の種類

炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に大きく分けられます。

ざくっと役割を説明すると、

  1. 糖質は脳・体のエネルギー源

  2. 食物繊維は便通を促したり、腸内環境を良くしてくれるもの


糖質制限がブームになってるくらいだから、ここ最近は「糖質=体によくない」っていう見方をされてしまいがち。

だから「健康的な食生活をおくりたい」って思ったときに「糖質をコントロールしたらいいんだ」っていう考えになるのは、わかるよ。

糖質にも色々な種類があって、例えばお米とお砂糖では主になってる糖質のタイプは違うし、そうなると消化吸収率も違ってくる。例えば長時間のエネルギーを補給するには消化吸収の緩やかなタイプが必要だし、すぐにリカバリーしないといけない時は逆に消化吸収の早いタイプが役に立つ。

不必要なものはない、ということ。

ただ目的が違うっていうだけ

炭水化物をここで細かく分けてたらきりがないから、食生活に関しては「ご飯」(主食)と「ご飯じゃないもの」(甘いお菓子とか)に分けるとしましょう

そして、この記事では「ご飯」について掘り下げていきましょう。

主食となるものだから、ご飯・麺・パン・粉モン・イモ類がメイン。

そしたらこのご飯だけど、ご飯を増やすと体重や関節にどんな影響がでるのか・・・

ご飯の量または体重が増えるとケガが増える? 

No.

むしろ体重が減るとケガしやすくなります。

ダイエットや食事制限をするとケガ(関節のケガ含む)が増えます。

エネルギー不足で疲労が溜まるからミスがおきやすいっていうのと、筋肉が十分に再生できないっていうのが大きな要因。

一生踊れる体を保つために必要な炭水化物量は、健康維持のために必要な炭水化物量と違うの?

No.

ダンサーにとっての健康体っていうのは踊っていくことを保てるカラダのことだと私は思う。

だから健康体=踊れるカラダ。

踊れる身体をつくる食事・食生活・栄養は、メディアの「健康食」やダイエット本では手に入りません。

詳しくはここでも学べる通り、すごくシンプルなものだけれど、これを一日二日続ければ急に踊りが良くなるのかというと・・・それは残念ながらないかな。

レッスンと同じで、繰り返し回数を重ねていくことで身体は出来ていきます。

それがすっごく歯痒いことってあるよね。

わかる。

ダイエットっていうのは、その歯痒さにつけこむ。

「2週間で!」とかいう短期間を謳い文句にしているものが多いのもそのため。

ちなみに、炭水化物の適正量ってどのくらい?

一般的には、ダンサーに必要な炭水化物量は約5g/kg wt/day。

体重1kgにつき5gの炭水化物が必要、ということ。

これは朝昼晩に主食を一人前食べていれば、あとは間食や飲み物で簡単に補える量です。

ちなみに、ご飯(やその他の食品)の量を計るのは私はお勧めしません。

ダンサーに多い気質上、数字に囚われやすく、ストレスが溜まり、摂食障害への入り口に足を踏み入れてしまうきっかけとなることも少なくないから。

量が足りているかどうかがわからない、っていう場合は、

  • 食事後の空腹感・満腹感(ワークショップ受講済みの方はスケールを活用してくださいね)

  • 食事後のレッスンでの体力、集中力、思考力

  • レッスン後の夕食の場合は就寝時のお腹の具合、睡眠の質、翌朝のエネルギーレベル

などを一つのバロメーターにするのも手。

生理が既に来ている場合は、生理周期が定期的か、というのも身体のバロメーターの1つ。

実際私の生徒・クライエントはこれらのバロメーターを使う人がとっても多い。 

これって、量を調節していく以外にも、自分の身体の状態を確認するっていうダンサーにとってすごく大切な癖も身につきます。 

Fumi x

参考資料

  • Russell JA. Preventing dance injuries: current perspectives. J Sports Med. 2013;4:199-210.

  • Sousa M et al. Nutrition and Nutritional Issues for Dancers

  • Civil R et al. Assessment of Dietary Intake, Energy Status, and Factors Associated With RED-S in Vocational Female Ballet Students. Front. Nutr., 09 January 2019

  • Nutrition and nutritional issues for dancers. Med Probl Perform Art. 2013 Sep;28(3):119-23. PMID: 24013282.

  • Leonkiewicz, M., & Wawrzyniak, A. (2022). The relationship between rigorous perception of one’s own body and self, unhealthy eating behavior and a high risk of anorexic readiness: a predictor of eating disorders in the group of female ballet dancers and artistic gymnasts at the beginning of their career. Journal Of Eating Disorders, 10(1). doi: 10.1186/s40337-022-00574-1

  • Thomas JJ. Keel PK. Heatherton TF. Disordered eating and injuries among adolescent ballet dancers. Eat Weight Disord. 2011. Sep, 16(3):e216-22.

  • Ekegren CL. Quested R. Brodrick A. Injuries in pre-professional ballet dancers: Incidence, characteristics and consequences. J Sci Med Sport. 2014. May;17(3):271-5.

  • Steinberg N, Siev-Ner I, Peleg S, Dar G, Masharawi Y, Zee A and Hershkovitz I. Extrinsic and intrinsic risk factors associated with injuries in young dancers aged 8-16 years. J Sports Sci. 2012;30(5):485-95.

Fumi Somehara

Fumi is the Founder and Principal Dietitian of DDD Centre for Recovery. Her expertise is in Dance Nutrition and Eating Disorders Treatment. She is passionate about supporting individuals to nurture respectful and compassionate relationships with their food and body.

https://dddcfr.com.au/fumi-somehara-bio
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