DDD Centre for Recovery

View Original

ズーリッヒバレエの問題はバレエ界全体の問題

今月初めにズーリッヒダンスアカデミーが問題になりましたね。

指導者が摂食障害行動を推進したり、体重規定で差別したり、「厳しい」指導でダンサーのメンタルヘルスをズタボロにした、と過去の生徒から訴えられましたね。

ちなみに去年は似たような問題でルードラベジャールバレエスクールが話題になって、1年間休校になりました(もう1年経つけど、まだ再開していない?)

ダイエットや「痩せることが美」という考えは普通じゃないんです。

だから問題になるんです。

今まで「伝統だから」や「それがバレエだから」という根拠のない理由で痩せを推進してきた業界特有の問題です。

しかもこれ、ヨーロッパのバレエスクールだけで起こっているわけではないですよ。

日本のバレエスクールでも、日々起こっていることです。バレエスクールだけじゃなくて、テレビや雑誌(特に若者向け)でもそうだし、スーパーやコンビニでもそう。いたるところに痩せることやダイエットすることを褒めたたえるメッセージが散漫しています。

「摂食障害行動は行き過ぎだけど、ダイエットは健康にも良いんだし、何が問題なの?」と思っている方:

まず、ダイエットは健康に良いなんてエビデンスありません。

確かに特定の疾患には特定の栄養素が有用っていう場合はあるけど、それはダイエットではない。

ダイエットすると人は必ず制限行動をとります。それはカロリー的な制限であったり、「カロリーなんて気にしない」とかいいながら炭水化物は制限するということだったり、形は様々だけど制限であることに変わりはない。

そして自分の身体のニーズを下回る摂取というのは健康に悪いんです。

理由が何であれダイエットが危険なことに変わりはないの記事でも書いてある通り、栄養失調は(当たり前だけど)身体に良くないんです。

「少し夕飯減らしてみたら?」や「ご飯抜くといいよ」というコメント・アドバイスは摂食障害行動を推進しているんですよ。

「私だって生徒時代は先生から痩せなさいとか舞台前には絞りなさいとか言われてきたけど、摂食障害にならなかったから大丈夫でしょう」と思っている方:

ならなかったのか、なっているのに気づかなかったのか、どちらでしょう?

前者の場合、それはあなたがただ単に摂食障害の遺伝子をもっていなくてラッキーだったということ(摂食障害はバイオ・サイコ・ソーシャルな疾患だから、、詳しくはこちらの記事を読んでね)。

後者の場合、確かに昔は今ほど摂食障害に対する理解がなかったから、見逃されてしまったということはあり得るでしょう。

「最近の子は根性がない。厳しく指導されるのが嫌なだけでしょう」と思っている方:

生徒を苦しめたり、けなしたり、辱めるのは、厳しいのではなくいじめです。

そしていじめは指導ではありません。

ちなみにダイエットも指導ではないし、体重測定も指導ではありません。「衣装にフィットしないから痩せてね」も指導じゃありません(差別です)。

ダンサーは他よりもメンタルヘルスの問題をかかえることが多いんです。それは気質的に不安症気味だったり、完璧主義だったりするから。

十分な食事をとることも、無理なストレッチをしないことも、体調不良の時は休むことを推進することも、軟弱な指導なのではなく、ダンサーのニーズやリスクをしっかりと理解した上でダンサーの健康・パフォーマンス力・将来性を考慮した素晴らしい指導です。

「痩せすぎはダメだけど、太り過ぎているダンサーは少し絞った方が体にもいいでしょう?ケガとかあるし」と思っている方:

摂食障害の栄養失調が見た目に現れる(「痩せすぎ」というのが見てわかる)のは、全体の3%にも満たないんです。残りの97%以上は一見外からじゃ絶対にわからないんですよ。

ぽっちゃりでも、その子の身体のニーズを下回る摂取であれば栄養失調に陥るし、栄養失調に陥ったら摂食障害になるリスクは驚異的に高くなります。

よく、「膝のけが予防のために体重を落としましょう」というのを聞きますが、これもエビデンスに基いたアドバイスではないどころかその逆です。前の記事でも書いている通り、これは体重そのものの問題ではなく、ロードマネージメントの問題なんです。

このようにバレエスクールが問題視されるのは、最近危ない指導法が増えたからではありません。

ダンサーが、「これは間違っている」とわかるようになってきたから、そして、公に訴える勇気をもてるようになってきたからです。

間違っていることは間違っていると言えるダンサーを育てたいと思いませんか?