「膝の負担を減らすために」ってダイエットを勧めないで

多種多様な身体を受け入れる、それを美とする、という考え方がすこーしずつ浸透しつつある傍ら、いまだに多く耳にするのが

「膝の負担を減らすためにはやっぱり体重を減らしたほうがいいよ」とダンサーにアドバイスする人。

見た目を避難しているわけじゃないし、身体の心配をしているからこそのアドバイスだから良いでしょ、というスタンスが多い。

 

これ、間違いです。

 

ダンサーのケガのリスクを上げるものって何か知ってる?

  1. 脂肪率が低い

  2. 低体重

  3. ロードとキャパシティの不均衡

1と2は説明しなくても分かると思う。なので3の説明にいきましょう。

(1と2が分からないという方は、これこれこの記事を読んでね)

 

ロードっていうのは踊りからくる身体的負荷は勿論のこと、スケジュール(トレーニング対休養の比率)、踊りのスタイル(クラシックとモダンでは使う筋肉が少なからず違ってくるでしょう?)、ダンサーの可用性(団の中で不可が誰かに集中していない?)、そしてトレーニング量の一貫性(練習量が多くなったり少なったりのアップダウンが激しくないか)などを含みます。

キャパシティというのはダンサーが上記のロードを受け入れるキャパシティのこと。本人の身体的状態やスキルだけはなく、メンタル面も大きく影響します。そしてメンタル面は仕事だけでなくプライベートでの物事にも大きく影響されます。

 

研究や専門的知識がまだ少なかった昔は、「痩せれば体重が減る分関節への不可も減るでしょ?」というシンプルな考えが主流でした。これが本当ならば痩せてる人は関節系のケガをしないことになるけど、そうじゃないでしょう?

実際はもっと複雑だということ。


体重が増えるほどに、関節にかかる重みが増えるのは本当。

でもそれを支える力は筋力そして身体の使い方に関係してきます。そしてこれらは正しいトレーニングを日々積み重ねていくことで習得できます。


また、いくら正しい身体の使い方をしていても、筋力があっても、疲労状態にあったら意味なし。パッと見分からなくても、疲労によって認知力や集中力が下がればミスも増えます。

疲労は練習のしすぎだったり、休養日を十分にとっていなかったり、食事が足りなかったり、水分が足りなかったり、ストレスがたまっていたり、様々なことで蓄積していきます。

 

だから、

「膝の負担を減らすためには体重を減らしたほうがいいよ」

と言う人(指導者かトレーナーと仮定しましょう)は自分自身が:

  • ダンサーに必要な筋力を養うだけのトレーニングをセットアップできていない

  • ダンサーに正しい身体の使い方を教えこめていない

  • 休養日はどうなっているか?レッスンやリハーサルの間にリカバリーを促す十分な休みをスケジュールに組み込めているか?など、スクールや団の責任&要因を無視している

  • 体重を減らすためにダンサーはダイエットするだろうけど、そこからくるエネルギー不足、栄養不足、水分不足の影響について考えてもいなければ低栄養から来るメンタル面の低下も考えていない(=ホリスティックに考えられていない)

と暗に言いふらしているようなもの。

痩せなさいという人は信用するな】の記事でも書いたけれど、痩せることが解決策だと思っている間はダンサーのココロとカラダ全てを見ることはできません。

 

ダンサーの食事について正しい知識を身につけたい方は【バレエ教師が知っておきたいダンサーの食事と栄養【入門編】】をご受講ください。

指導者として更なるレベルアップをする準備の出来ている方は、【バレエ教師なら知らなきゃいけない摂食障害【基礎・予防・スクリーニング】】をご受講ください。

思春期ダンサーのボディイメージについて学びたい方は、【ダンサーが知っておきたい成長期のカラダと変化】がお勧めです。


参照

Bolling, C, van Rijn, RM, Pasman, HR, van Mechelen, W & Stubbe, JH 2021, 'In your shoes: A qualitative study on the perspectives of professional dancers and staff regarding dance injury and its prevention', Translational sports medicine, vol. 4, no. 3, pp. 386-94.

Kenny, Sarah & Whittaker, Jackie & Emery, Carolyn. (2015). Risk factors for musculoskeletal injury in preprofessional dancers: A systematic review. British Journal of Sports Medicine. 50. bjsports-2015. 10.1136/bjsports-2015-095121.

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